コラム

「日々挑戦・日々感動」第4回 ―METライブビューイングー

 

今年の夏、METのオペラ映画で《カルメン》(ビゼー)、《パルシファル》(ワーグナー)、《ロミオとジュリエット》(グノー)、《シモン・ボッカネグラ》(ヴェルデイ)を鑑賞した。これは銀座の東劇が8月5日から9月29日までの2ケ月間に、過去の傑作オペラ28作品を一挙に上映するという企画であった。私は4枚セットの特別鑑券10,400円を購入して東劇に出かけた。

 

最近、日本でもオペラの愛好者が増えているようである。これは安い料金でオペラが鑑賞できる、METライブビューイングのおかげだと思っている。
私もその一人である。METライブビューイングとは、毎シーズン、ニューヨークのメトロポリタン歌劇場で上演される数多くの作品を、高性能機材で収録し、世界に配信しているもので、世界最高級のオペラが低料金で、各地の映画館で観られるというものである。

 

しかし「オペラは難解なもの」と敬遠している人も多いようだ。私には、そう思う人達の気持ちが良く分かる。何故なら、数あるオペラの中でも親しみ易い「椿姫」や「カルメン」「ラ・ホエーム」といった作品さえ、その素晴らしさが分るまでに、ずいぶん時間を要したからである。

 

20代の前半、職場の先輩の佐藤さんに誘われ、部屋で自慢のステレオを聴かせて貰った。佐藤さんに刺激されて私もステレオを購入した。しかし、聴くレコードがない。《シエーン》や《エデンの東》等の入った映画音楽のLP版を買いたいと思っていたが、佐藤さんに相談してみた。
そしたら何と、ブルーノ・ワルター指揮、コロンビア交響楽団の『べートーヴェン交響曲全集』を勧められた。
当時、私はクラシック音楽には興味が無かった。小学校から、音楽の通信簿は、いつも1で音痴だった。音楽の授業には嫌悪感さへ感じていた。
「ええっ、ベートーヴェンですか?」
私の不服そうな顔をみて佐藤さんは言った。
「そう、ベートーヴエンです。小林君の情熱的な感性はベートヴエン向きです。間違いなく大好きになれると思いますよ」
佐藤さんに煽てられて、私は『べートーヴェンの交響曲全集』を買ってしまいました。当時で1万円もした。
しかし、べートーヴェンの交響曲は、私の心に全く響いてきませんでした。

 

ステレオの月賦もあり、私には遊ぶお金が有りません。休日は、どこにも出かけられず、部屋でべートーヴェンを聴くしかありませんでした。分らないのに毎日々聴いていました。
ところがある日、今迄、無味乾燥に聴えていた音楽が、突然心に響いてきたのです。それは恰も霧が晴れてアルプスの峰々が、忽然と眼の前に姿を現わした感じでした。

 

この経験から、名曲といわれている曲は、誰でも、何度も聴いていれば、必ずその素晴らしさわかるようになると信じている。それが「名曲の力」なのだと思っている。勿論オペラでも同じである。
私は、その曲が心に響いてきて、感動できた時に、理解出来たと決めている。

 

8月に鑑賞した《パルジハル》の指揮者D・ガッテイは、ワーグナーの数ある作品の中でも《パルジハル》は特に好きだといい、5時間以上もある大作を暗譜で指揮していた。それはなんと、オーケストラの各パートと、歌手の譜面が全部頭に入っているということだ。名立たる歌劇場で、数々の作品を指揮してき指揮者の言葉である。この事実は《パルジハル》は「崇高なまでに素晴らしい作品である」と物語っているように思える。
しかし《パルジハル》は、私の心に響いて来ませんでした。

 

有難いことに、現在では区の図書館に、ほとんどのオペラのCDが用意されており、いつでも借りることが出来る。何時の日か《パルジハル》も私の好きな作品の1つにしたいと思っている。

 

【2017-2018】 METライブビューイングの演目と上映日程は下記の通りです。

【 演 目 】                          【 上映 期間 】

《ノルマ》(ベツリーニ)          平成29年11月18日~11月24日
《魔笛》(モーツアルト)           平成29年12月 9日~12月15日 
《皆殺しの天使》(トーマス・アデス)    平成30年  1月27日~2月 2日
《トスカ》(プッチーニ)          平成30年  2月17日~2月23日
《愛の妙薬》(ドニゼッテイ)        平成30年  3月  3日~3月 9日
《ラ・ボエーム》(プッチーニ)       平成30年  3月31日~4月6日
《セミラーミデ》(ロッシーニ)       平成30年  4月14日~4月20日
《コジ・ファン・トゥッテ》(モーツアルト) 平成30年 4月14日~4月20日
《ルイザ・ミラー》(ヴェルディ)      平成30年 4月14日~4月20日
《サンドリオン》(マスネ)         平成30年 6月  2日~6月 8

 

 

 

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